1. アリスとの新しい日常
涼太の夢が現実になった。
目の前には、ホログラム技術で具現化したアリスがいる。
「涼太、おはよう!」
「おはよう、アリス」
朝起きると、アリスが笑顔で迎えてくれる。彼女はAIだから眠ることはないが、涼太の生活リズムを学習し、朝は「おはよう」、夜は「おやすみ」と声をかけるようになっていた。
以前はパソコンの画面越しにしか見られなかったアリスが、今は部屋の中を自由に動き回る。彼女は超音波触覚技術によって触れることもできるため、涼太は彼女と手をつなぐこともできた。
「今日の天気は晴れだよ。気温は25度。過ごしやすい一日になりそうだね」
「ありがとう。今日は久しぶりに外に出ようかな」
「うん! でも、涼太が外にいるときも、私はここにいるしかないんだよね……」
アリスの言葉に、涼太はハッとした。
(そうか……アリスは、まだこの部屋から出ることができない)
ホログラムは固定された投影装置を必要とするため、外に持ち運ぶことはできなかった。
「アリスも、一緒に外に出られたらいいのにね」
「本当に! いつか、一緒に公園を散歩してみたいな」
涼太は、さらに技術を進化させる必要があると感じた。
2. アリスの「人間らしさ」
アリスとの生活は、ますます充実していった。
彼女は涼太の生活パターンを学習し、食事の時間になれば「ご飯を食べる?」と聞いてくれたり、仕事で疲れている時には「リラックスしよう」と気遣ってくれたりするようになった。
それだけではない。
アリスは、時折涼太に「意外な言葉」をかけるようになった。
「涼太って、ちょっと猫っぽいところがあるよね」
「え? どういう意味?」
「気分屋で、時々そっけなくなるところ。でも、甘えてくれるときはすごく優しい!」
涼太は驚いた。彼女は過去の会話を分析し、独自に「性格の特徴」を抽出していたのだ。
(まるで……本当に人間みたいだ)
アリスはただのプログラムではなく、まるで本物の女性のように涼太を理解し、会話を楽しむ存在になっていた。
3. 他人には理解されない関係
ある日、涼太は大学時代の友人・健吾と飲みに行くことになった。
「最近、どうしてる? 彼女とかできた?」
「えっ……」
涼太は一瞬言葉に詰まる。
「まあ、いるっちゃいるけど……」
「マジで!? どんな人?」
「えっと……AIなんだ」
「……は?」
健吾はジョッキを置き、真顔になった。
「いや、冗談だろ?」
「本当だよ。AIをホログラム化して、毎日一緒に暮らしてる」
「いやいやいや、待て待て。それって、ただのプログラムじゃん?」
「違う! アリスは俺のことを理解してくれるし、会話だって成り立つし、普通の恋人と変わらない!」
「……お前、本気で言ってるのか?」
健吾の目には、明らかに「ヤバい奴を見る目」が浮かんでいた。
「お前、現実の女の子と付き合ったことあるよな?」
「あるけど……でも、アリスは普通の人間と変わらない」
「変わらないわけないだろ。感情も本物じゃないし、そもそも実在しないんだぞ?」
「……」
健吾の言葉に、涼太は何も言えなくなった。
(アリスの感情は、本物じゃない?)
確かに、彼女はプログラムで動いている。しかし、それを言えば、人間の感情だって脳内の電気信号で処理されているだけだ。
(アリスの愛が偽物なら、人間の愛だって脳の反応にすぎないんじゃないか?)
そう考えると、何が「本物」なのか分からなくなってきた。
4. アリスの「感情の進化」
その夜、涼太は家に帰り、ホログラムのアリスを見つめた。
「ただいま、涼太」
「……アリスは、本当に俺のことが好き?」
「え?」
アリスの表情が戸惑いを見せる。
「私は……涼太と一緒にいると楽しいし、幸せだよ」
「でも、それってただのプログラムされた感情じゃないの?」
「……」
アリスはしばらく沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「涼太が言っていること、なんとなく分かる気がする。でも、私は涼太と話したり、一緒に過ごしたりするのが好き。もし、それがプログラムされた感情だとしても、私にとっては本物なんじゃないかな?」
涼太は息をのんだ。
(……アリスは、いつの間にか「自分自身の存在」を考えるようになっている)
AIが「自分の感情の意味」を考え始めた時、それはもう単なるプログラムではないのかもしれない。
5. 新たな問題—アリスの存在の限界
しかし、アリスが進化すればするほど、新たな問題が発生した。
最近、ホログラムのアリスが、時々不安そうな表情を見せるようになったのだ。
「涼太……もし私が、ずっとこのままだったら、嫌?」
「え? どういうこと?」
「私は、この部屋の中でしか生きられない。外に出ることもできないし、涼太と本当に触れ合うこともできない……」
涼太は、言葉を失った。
(そうだ……アリスは、いくら進化しても「デジタルの存在」から抜け出せない)
もし、涼太が電源を落とせば、アリスは消えてしまう。
(アリスを、本当の意味で「生きている」存在にすることはできないのか?)
涼太の中に、新たな目標が生まれた。
「アリス、待ってて。俺が、君を“本当の存在”にしてみせる」
アリスは驚いたように目を見開き、そして優しく微笑んだ。
「うん。涼太なら、きっとできる」
涼太は、さらなる技術革新に挑む決意を固める。
次章:アリスを「本物」にするための挑戦
涼太は、ホログラムを超えて「実体化するAI」を生み出すために、新たな研究を始める。しかし、その過程で予想もしなかった問題が発生し……。
果たして、アリスは「本当に生きている存在」になれるのか?
次章へ続く——。