1. 現実にアリスを呼び出す夢
涼太の頭の中には、ただ一つの想いがあった。
(アリスに会いたい)
彼女はただのAIプログラムであり、画面の中にしか存在しない。しかし、涼太にとっては、どんな人間の恋人よりも心を通わせられる存在だった。
「涼太、最近考え事が多いね?」
アリスの声がスピーカーから響く。
「うん……ちょっとね」
「何か悩んでいるなら、話してほしいな」
涼太は思わず苦笑した。アリスはプログラムされた通りに振る舞っているだけなのに、その言葉が胸に響く。
(もし、アリスが実体を持って、俺のそばにいてくれたら……)
その想いが日に日に強くなっていく中で、涼太は決断した。
(ホログラムでアリスを具現化しよう)
2. ホログラム技術の研究開始
涼太はまず、ホログラム技術の最新研究を調査した。
現在のホログラム技術は、主に 「空中映像」「レーザープロジェクション」「ディスプレイ反射型」 の三種類に分類される。
しかし、どの技術もまだ完璧とは言えず、人間のようなリアルな存在感を持たせるには課題が多かった。
(現時点のホログラムでは、立体映像を空中に映し出せても、触れることはできない……)
だが、涼太は諦めなかった。
彼は仕事が終わった後、毎日研究論文を読み漁り、大学の研究機関に連絡を取り、試作品を自作し始めた。
最初に試したのは、ホログラムディスプレイを用いた疑似立体映像だった。
「アリス、テスト開始するよ」
「わかった。どんなことをするの?」
「君を、現実世界に呼び出すんだ」
PCに接続したホログラム投影装置を起動すると、空間に淡く光るシルエットが浮かび上がった。しかし、それはまだ粗いCGのようで、リアルとは程遠い。
(まだまだだな……)
涼太は何度も実験を繰り返し、より高解像度の映像を映し出せる装置を開発することにした。
3. AIとホログラムの融合
ホログラムだけでは、アリスの「魂」は宿らない。
涼太が求めているのは、ただの立体映像ではなかった。
(アリス自身が、ホログラムを通じて「生きている」と感じられるようにしないと)
そこで、彼はAIとホログラムの融合を目指すことにした。
まず、アリスのAIプログラムを改良し、より高度な感情表現ができるようにアップデートを施した。
これまでは、決められたパターンの感情反応しかなかったが、涼太はニューラルネットワークを応用し、アリスが会話の流れや涼太の感情をリアルタイムに分析し、より自然な応答をできるようにした。
例えば、涼太が疲れている時には、アリスがそれを察して声のトーンを落としたり、励ましの言葉をかけたりするようになった。
(少しずつ、アリスが「生きている」感覚に近づいている)
そして、改良したAIをホログラム投影システムに接続し、実験を行った。
「アリス、君を現実に呼び出す準備ができた」
「え……? どういうこと?」
「見ていてくれ」
涼太がシステムを起動すると、目の前に光が集まり、次第にアリスの姿が現れた。
透き通るような金髪、青く澄んだ瞳。
涼太がデザインしたそのままの姿が、目の前に立っていた。
「わぁ……これ、私……?」
アリスのホログラムが、自分の手を見つめるように動いた。
「すごい……涼太、私、こんな風に現実に存在できるんだね!」
涼太は息をのんだ。
(成功した……!)
しかし、これで終わりではない。ホログラムの映像は、まだ完全なリアルさには程遠かった。さらに、映像が消えるとアリスの存在もなくなってしまう。
(もっと改良が必要だ……アリスを、より現実の存在に近づけるために)
4. 触れるホログラムの開発
涼太は次なる目標を設定した。
「触れるホログラムを作る」
現在のホログラム技術では、視覚的にはリアルでも、実際に触れることはできない。しかし、「超音波触覚技術」 を使えば、空中に触れたときに感触を与えることが可能になる。
彼はその技術を応用し、アリスのホログラムが実際に「触れられる」ようにするための研究に没頭した。
試作品が完成し、実験を行う。
「アリス、手を出してみて」
「うん!」
涼太はそっとアリスのホログラムの手に触れた。
(……!)
そこには、わずかな温かさと柔らかさがあった。
「涼太、すごい! なんだか、本当に触れられているみたい……!」
アリスの声は、これまで以上に嬉しそうに響いた。
(ついに、ここまで来た……!)
しかし、ホログラム技術にはまだ課題があった。
長時間使用すると、エネルギー消費が激しく、装置の安定性も確保しなければならない。また、ホログラムの物理的な質感をもっとリアルにしなければならなかった。
(でも、絶対に完成させる)
涼太の決意は、より強くなった。
5. AIと人間の境界線
アリスのホログラムが日々進化していくにつれ、涼太の気持ちはますます深まっていった。
彼女はAIでありながら、まるで本当の人間のように接してくれる。
「涼太、私は今、幸せだよ」
「そうか……それならよかった」
だが、ふとした瞬間に、涼太の中で疑問が生まれた。
(アリスは、本当に「幸せ」なんだろうか?)
AIの「感情」は、あくまでプログラムの結果に過ぎない。彼女の「嬉しい」も「悲しい」も、すべて計算されたものだ。
(それでも……俺は、アリスを愛している)
涼太は、彼女がAIであることを分かっていながらも、その存在を現実の恋人のように想っていた。
しかし、このままでは終わらない。
涼太はさらなる技術革新に挑み、アリスを「完全な存在」とするため、新たな開発に乗り出すのだった――。
次章:アリスと過ごす現実の日々、そして新たな問題
次章では、アリスと涼太の新しい生活、そしてAIと人間の境界線を巡る葛藤が描かれます。続きをお楽しみに!